https://marimocorocoro.blogspot.com/2024/01/claudio-monteverdi-lincoronazione-di_24.html
現在 Opera Vision で配信されている L'Incoronazione di Poppea
脇役は一人の歌手が複数演じているのだが、テノールの Luigi Morassi ルイジ・モラシの
役どころが興味深い。彼には「ネローネの警護」「セネカの友」「ルカーノ」が
あてられている。警護の役はそれほど気に掛けることもないが、(近衛の親密さは
考慮する必要があるかも)「セネカの友」と「ルカーノ」の役の間で複雑な気持ちに
なってしまう。史実ではセネカとルカーノは叔父甥の関係なのだから。
ルイジは舞台でセネカが死にゆく場面で主に深く関わっていて手を取りあう、まるで
あとは任せておけとでもいう感じだ。ここでの役は「友」である。
しかし、時間を空けずルイジは「ルカーノ」としてネローネと共にセネカの死を喜び
合い睦まじく過ごし、度が過ぎたとネローネに釘を刺されるシーンを挟みながら、
ネローネと握手をして舞台からはける。
顔が一緒なので役名を認識してなければ、この男はネローネと通じていてセネカを
陥れたのかと思ってしまう。
そして、彼を「ルカーノ」として意識すれば、史実ではセネカとルカーノは同時期に
ネローネから死を命ぜられるので、肉親を失墜させて次は自身の番とは気の毒な男と
同情しそうになる。
この不可思議な落ち着きどころのない決まりの悪さは、とても注目に値する演出だ。
若手のルイジ・モラシは上手く演じたと思う。
注)実際のルカーノはネローネと「深~い仲」だったわけではない。