youtube でチェスティ・バロック・コンクール 2023 ( Cesti Competition 2023) を
視聴した。このコンペティションは毎年行われていて、受賞、入賞の他にも、コンサートやオペラ出演などの特典があって、参加者には魅力的なコンペになっていた。
しかし、どうやら今年の受賞者にはバロックの専門外が見受けられた。
カウンターテナーは選外だったし、1位2位のソプラノとメゾの受賞者の過去の歌唱履歴
にはバロックはなかった。
いわゆるバロックな歌い方のソプラノは最年少だったのでヤング・アーティストという賞で
落ち着くことになった。
過去の結果も似たような感じで、カウンターテナーのロドリゴ・ソーザ・ダル・ポッゾも
カン・ミン・ジャスティン・キムも選外だし、アリアンナ・ヴェンディッテッリは
オーディエンス賞だった。初期に参加したアルバムの評が「バロックではない」と
一部で言われたジュリア・セメンツァートは2位になっていて、
ヴェンディッテッリは後にセメンツァートのような歌唱スタイルになっている。
確かに最近のバロック歌唱は程よい装飾をする方向性なので、それに倣っているのかも
しれないが、レパートリーじゃないのに賞ほしさに歌うというのもどうかと思う。
さて、3位はバリトンのジャコモ・ナンニが受賞した。コンペを通して彼が一番こなれて
いたと思う。イタリア人なのでディクションに一日の長があるとはいえ、奇をてらった装飾
が無いのが反って誰よりもエレガントだった。
驚いたことに彼は9月18日までロッシーニ・フェスティバルで「ランスへの旅」に出演
していて、その後22日からコンペ入りして27日の決勝に臨んでいる。さらに、彼は以前から結構舞台に立っていて、今回のコンペも連続した仕事(舞台)をこなしただけという風
である。経験のおかげでペース配分や気持ちの切り替えが長けていたのだろうか。舞台、舞台のその時その時のベストを引き出す術が身についているようだ。
コンペだけに集中していたら、もっと上位を狙えたかもしれない。
Giacomo Nanni (ITA) - "Volate piu dei venti" (George Friedrich Handel "Il Muzio Scevola")
Volate piu dei venti Fly faster than wind,
Momenti che scorrete You moments that mast elapse
Innanzi al mio piacer. Before I fulfill my desires.
Ma siate lenti, lenti But be slow, so slow,
Momenti che verrete You moments that will come
Segnendo il mi goder. Once I enjoy my plesure.
Agrippina (George Friedrich Handel)
ジャコモ・ナンニはパランテを演じている