1月15日のBSプレミアムシアターで Handel の Silla を観た。
このオペラは神奈川県立音楽堂で 2022年10月に上演されたものだ。本来は 2020年3月を
予定していたが上演数日前に出たコロナの緊急事態宣言のためリハーサル大詰めのところで
中止になってしまったのだが、今回この好機が巡ってきたのだそうだ。
出演は、ソニア・プリナ、スンエ・イム、ロベルタ・インヴェルニッツィ、
ヴィヴィカ・ジュノー、フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ、ヒラリー・サマーズ、
ミヒャエル・ボルス、黙役の日本人、となっている。
好きな歌手が3人も出ている、日本に来ている、それを NHK で見ることができて
感激だった
演出は歌舞伎テイストを取り入れたジャパネスクな舞台。ローマが舞台のストーリーが
太秦国という名に代わってしまったようだ。演者のメイクは歌舞伎のそれに倣って、悪漢
シッラは青の隈取、正義感のある若者レピド、剛腕な男クラウディオは赤の隈取とキャラ
設定が分かりやすくなっているし、女性陣も打掛一枚多く纏うメテッラはフラヴィア、
チェリアとの間に身分差があることがそれとなく分かった。
演奏は申し分なく素晴らしく、美しい。熟練とイタリア人の歌手陣なので歌が言葉、セリフ
として聞こえてきた。
シッラ(ソニア・プリナ)
メテッラ、シッラ(ソンエ・イム、ソニア・プリナ)
チェリア、クラウディオ(フランチェスカ・ロンバルディ、ヒラリー・サマーズ)
フラヴィア、レピド(ロベルタ・インヴェルニッツィ、ヴィヴィカ・ジュノー)
神(ミヒャエル・ボルス)
そして、特にソニア・プリナのダイナミックな演技がこの歌舞伎スタイルによく合って
いたし、長年コントラ・アルトとして男役を経験しているから、男性の所作が決まって
いてカッコよく、色気があって、美しかった。
見栄を切っているよう
宝塚を観ているよう
コロナ後のオペラの新作は演出がコロナ前と変わってしまったものが見受けられる。
役者同士の距離が遠かったり、身体の接触が少なくなったり、対面で歌い合う場面が
少なかったりする。
このオペラはコロナ前の企画・演出なので、抱き合ったり、体を寄せあったりと人間の
感情と行動がリンクする当然の動きがここそこにあって、それを見る毎に心が揺り動か
された。
新しい演出方法も評価されるものだけれど、このような舞台はやはり素直に感動した。