2025年4月15日火曜日

Maayan Licht マーヤン・リヒト 「時と悟りの勝利」より ‘Un pensiero nemico di pace’

ヘンデルの「時と悟りの勝利 'Il trionfo del tempo e del disinganno'」はどのアリアもはずれがなくて、(ちょっと長いが)聴き応えがある。
けれど、「美 'Bellenice'」のアリア 'Un pensiero nemico di pace ' は長いアジリタが続くので演奏が難しいものだ。聴いていてブレスがわかってしまうのも、必死になった歌う様がわかるのも聴く側は残念に感じてしまうから、歌手もたいへんだろう。

ところが、男声つまりソプラニスタが歌うとそんな困りごとは吹っ飛んでしまう。
Maayan Licht - ‘Un pensiero nemico di pace’| Handel

余裕の歌いっぷりである。

本当はかつてはカストラートに与えられたアリアなのかも?




2025年4月12日土曜日

The making of 'I Grotteschi' | Claudio Monteverdi


4月11日からベルギーのモネ劇場(La Monnaie) で "I Grotteschi" が上演されている。
モンテベルディの楽曲をして新しいドラマを作ったそうだI Grotteschi | Monteverdi's trilogy revisited | La Monnaie / De Munt
出演者はサイトの通り
フェデリコ・フィオリオ君 (Federico Fiorio)の前髪が久しぶりにカーリーで可愛らしい。(でも、彼も含めて登場人物皆クセが強いようだ)


2025年4月10日木曜日

アロイス・ミュールバッハーのナルチーゾが良い演技をしている

アロイス君がアグリッピーナのリハーサル時の動画を投稿してくれた。

第一幕、ナルチーゾがアグリッピーナに計画を打ち明けられて秘密の共有をしたあとのナルチーゾのアリア。

嬉しさ一杯でもっと傍にいて欲しい感に溢れている。ソファーを指でチョンチョンしてアグリッピーナを誘う仕草が様になっている。

アロイス君、突然こんなにセクシーになっちゃっうなんて思ってもみなかったよ。

 https://www.instagram.com/reel/DH8bl4uIb00/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==

Gassmann "L'Opera Seria"  ガスマンの「オペラ・セリア」を観た。

 スカラTVで配信された "L'Opera Seria" を観た。ヘンデル、グルックの後でモーツァルトの手前の頃の作品なので、綺麗な曲が沢山あって聴き応えがあった。特にバロック・オペラに比べてレチタティーヴォ・アッコンパニャートが多く尚且つ技巧的で聴いていて楽しかった。

作曲者のガスマンはグルックの後を受けて音楽史に登場するので、このオペラはドラマとして見ごたえがあるし、彼らの時代に18世紀前半のオペラがどう評価され、今後「オペラ」というジャンルをどうしたいのかが視覚的に理解できる演出だった。特に "Barbara~" のアリアのシーンではダ・カーポ・アリアが様式美にとらわれすぎていて、歌手でさえもカタルシスや高揚感を満たせないという不満が感じられる場面になっていて、興味深かった。

ミネッチャ(Mineccia), ザッゾ(Zazzo), アレグレッツァ(Allegrezza)はベテランの無駄遣いじゃないかと一瞬思ったのだが、この時代ではカストラートや男声トラヴェスティがもう流行らなくなっていたということだろう。しかし、三人はとても可愛らしかった。ムーミンに出てくるミィのようでいつまでも観ていたかった。

衣装で興味深かったのが、初めからこの興行に不満で最後にはトンズラする支配人にネクタイを着けさせたことだ。ネクタイはこの舞台の衣装のなかで最先端のファッションアイテムだ。これは彼がただ一人、時代を読める(オペラ・セリアは時代遅れ)人間として設定されているからだろう。

最期は、舞台が大コケで支配人にも逃げられて劇場に残された歌手達、作曲家、台本作家、その他関係者が「どこかで自分たちを受け入れてくれるはず」と奮起するのだが、初演上演当時の観客と現在の私達では解釈が異なると思う。答えは一つじゃない。







ガスマンの作品を集めたアルバムがあった。11番以降が "L'Opera Seria" のアリア

2025年4月4日金曜日

劇場のクセ

 ルイジ・デ・ドナートが歌うアルマヴィーア伯爵の動画があったので聴いてみた。

https://youtu.be/iP6yTzvc-A4?si=PpeZh6C8imwz3zyT

今回は彼のパフォーマンスの話をしたいのではなく(彼は音域が広い良い歌手だと思っている)、舞台の最適ポジションはどこなのかということを考えたかったのだ。

というのも、私は地元のコンサートホールでオペラを一本とオペラコンクールで複数の歌手のパフォーマンスを聴く機会があって、その時の印象が蘇ったからだ。

オペラは「椿姫」だった。アルフレード役は当時その役で何度も日本で演奏してくれるイタリア人テノールで、日本では評価が高い歌手だと思われた。私は遠征費も掛けずに(東京はここからはとても遠い)そんな人気のある歌手が聴けるのはまたとないチャンスとかなり期待していた。しかし、彼の「乾杯の歌」の第一声はホールを響かせる美しさも声量もなかった。後に伝え聞いた話では、このホールはオケや楽器の音色を効果的拾っているらしい、とのことだった。舞台袖付近であの歌を歌う演出だった彼は圧倒的に不利だったのだ。

オペラコンクールは、ここ数回上位者がその後の他のコンクールでも好成績を収める程度に質の良い若手が集まるようになったコンクールだった。ファイナリストは6人で、そのうち一人はセミファイナルまでのパフォーマンスでは歌の解釈、役の解釈が堅実かつ的確で好ましいものだったが、ファイナルでは精彩を欠いた。声がオーケストラにかき消されてしまい、それに気づいたであろう彼のパフォーマンスは勢いを失ってしまった。第一声で明らかに解ったそれは、アルフレード役テノールの立ち位置の失敗と同じだった。舞台中央であっても音響の死角があったのだ。

さて、デ・ドナートの動画だがレチタティーヴォとアリアの前とで聴こえ方が違う。確かにアリアの方が歌唱スタイルを保っていて美しい響きがあるのだが、声そのものが小さい。その時彼は舞台の中央前にいる。一方アリア後半で彼は若干奥に下がるのだが、音としては大きく聞こえてくる。これは、この劇場の構造において音響効果の良好な部分とそうでない所があるということだろう。

劇場やホールはどんなに評判が良くても、各々にクセも得て不得手があるのだと思う。歌手や演出家は使用するにあたって早々に(リハーサルの間に)それらを見抜いてより良いパフォーマンスを見せてほしいと思う。

2025年4月3日木曜日

L'opera seria - Trailer (Teatro alla Scala) Filippo Mineccia を探せ!


現在スカラ座でガスマンの "L'Opera Seria" が上演されている。フロリアン・レオポルト・ガスマンはグルックのあと宮廷に招かれた作曲家で、サリエリを指導し、ガスマンの娘はサリエリの指導の下歌手になったのだそうだ。

さて、今回の "L'Opera Seria" はオペラ・ブッファで、文字通りオペラを上演するまでの悲喜こもごもを描いている。
そして、フィリッポ・ミネッチャ (Filippo Mineccia) はトラヴェスティで登場する。彼はお顔がもともと中世的なクールビューティなので、女装がよく似合っていて、トレーラーでは初見どこに登場したのかよくわからなかった。

現在 Rai Radio3 Suite では初日の演奏を聴くことができる。

またスカラTVでは今日の舞台がストリーミング配信される。

Festival d’Aix-en-Provence の La Calisto (カリスト)を聴いた ~エクサンプロヴァンス音楽祭~

Festival d'Aix-en-Provance の演目 "La Calisto" が終わった。   LA CALISTO | Festival d’Aix—en—Provence | 4 — 21 JUILLET 2025 こちらには実力のある歌...