「女殺油地獄」も観て、元禄時代の貨幣制度がわかりにくかったので
記録しておく。
上方の流通貨幣は銀であること。
銀一貫目=銀1000匁(20『匁』以上は20『目』と呼ぶ)
銀1匁=(銅)銭67文
江戸の貨幣制度に当てはめると
金1両=60匁
銅銭一貫=銅銭1000文
なので、河内屋夫婦がお吉に託した800文は銀12匁程度にしかならないので、
200目(匁)を返済しなければならない与兵衛には、親がくれた金は微々たる
ものでしかなかった。
豊島屋から奪った580目と親からの800文はその後どうなったかというと、
200目は借金の返済、あと桜井屋へ金3両(=銀180目)銭800文を支払い、
河内屋へは金3両(=銀180目)銭一貫文(=1000文=銀15匁)を支払っている。
捕まる時には5匁あるかどうかとういうのに、それでも遊ぼうとしているのだから、
見栄っ張り、物事を深く考えない、思い付きで行動する、分かりやすい嘘をつく
短絡的な男だ。
余談だが、与兵衛が犯人だとわかるくだりは、状況証拠(急に金払いが良くなる)と
着物に酒をかけると血色が現れるというほぼ物的証拠によるもので、血痕がわかる
とは江戸時代にもルミノール反応でもあったか?と思わせてくれるのだが、
実際は濃い藍色の着物に着いた血痕が乾いたときには目立たなく、かけた液体に溶け
出たということだと思う。
歌舞伎の与兵衛は茶色の地の着物、人形浄瑠璃の与兵衛は藍色の着物なので、人形
浄瑠璃の方が理にかなっているといえる。