You Tube でヴィヴァルディの「ウティカのカトーネ」を観た。
今回の上演のいきさつは2021年の年末フェラーラで上演されたヴィヴァルディの「ファルナーチェ」が好評だったので、再びヴィヴァルディの作品を扱った、ということらしい。
また、プログラムはもともと1幕目が失われているて今まではの1幕目の再現に力を注いで
いたが、今回はそこをあえて再現せずにいる。
3幕目が失われている「ファルナーチェ」をその通りに上演した時と同じアプローチだ。
指揮者はこちらもフェデリコ・マリア・サルデッリ。
演者はテナーとソプラノ、メゾ、アルトの構成、
カウンターテナーは使っていない。今回はこの構成で良かったと思う。
「ファルナーチェ」の成功にあやかってか、今回はサルデッリ関係者の割合が多かった。
同じエージェントから、アリアンナ・ヴェンディッテッリ、ミリアム・アルバーノ、
ヴァレンティノ・ブッツァが、「ファルナーチェ」関係からキアラ・ブルネッロと黙役が
出ていた。
ヴェンディッテッリはチェーザレ役だった。芝居の中の年齢設定は恐らくいい年のおじさん
なのだが、美人さんなヴェンディッテッリによって若々しく情熱的な青年になっていて
マルツィアがお父さんのカトーネに逆らってまでもチェーザレを愛しぬくのも
分かる気がした。
ミリアム・アルバーノは初めて声を聴いた時(これはJ.J.オルリンスキが初めて収録された
アルバムに2曲提供しているもの)に比べてグッと情熱的になっていて、
演者としても上手くて目が離せなかった。
芝居の中では本筋にいない役なので(ポンペイウスの仇を撃つチャンスを虎視眈々と狙っているので、どちらかというとドラマの傍観者であったり、狂言回し的な立ち回りをしている)、いざ自分の野心を晒すと感情の振り切り具合が凄まじく、与えられたアリアもそれに相応しく感情をのせ、かつ正確に歌い上げていて、本当に感動的だった。
キアラ・ブルネッロは声が逞しいアルトでミリアム・アルバーノ(エミリア)の恋人として
色っぽく、チェーザレの部下として勇ましかった。ただ、今回手を骨折していたので(演出
ではなかった)踏ん張りが足らない時があった。「ファルナーチェ」の時は良かったのです
よ。
見目麗しい女性が男役をやると、生身の男性ではなく女性の思う理想の男性像が
そこにあって夢心地になれるので、今回の配役は絶妙だったと思う。