ルイジ・デ・ドナートが歌うアルマヴィーア伯爵の動画があったので聴いてみた。
https://youtu.be/iP6yTzvc-A4?si=PpeZh6C8imwz3zyT
今回は彼のパフォーマンスの話をしたいのではなく(彼は音域が広い良い歌手だと思っている)、舞台の最適ポジションはどこなのかということを考えたかったのだ。
というのも、私は地元のコンサートホールでオペラを一本とオペラコンクールで複数の歌手のパフォーマンスを聴く機会があって、その時の印象が蘇ったからだ。
オペラは「椿姫」だった。アルフレード役は当時その役で何度も日本で演奏してくれるイタリア人テノールで、日本では評価が高い歌手だと思われた。私は遠征費も掛けずに(東京はここからはとても遠い)そんな人気のある歌手が聴けるのはまたとないチャンスとかなり期待していた。しかし、彼の「乾杯の歌」の第一声はホールを響かせる美しさも声量もなかった。後に伝え聞いた話では、このホールはオケや楽器の音色を効果的拾っているらしい、とのことだった。舞台袖付近であの歌を歌う演出だった彼は圧倒的に不利だったのだ。
オペラコンクールは、ここ数回上位者がその後の他のコンクールでも好成績を収める程度に質の良い若手が集まるようになったコンクールだった。ファイナリストは6人で、そのうち一人はセミファイナルまでのパフォーマンスでは歌の解釈、役の解釈が堅実かつ的確で好ましいものだったが、ファイナルでは精彩を欠いた。声がオーケストラにかき消されてしまい、それに気づいたであろう彼のパフォーマンスは勢いを失ってしまった。第一声で明らかに解ったそれは、アルフレード役テノールの立ち位置の失敗と同じだった。舞台中央であっても音響の死角があったのだ。
さて、デ・ドナートの動画だがレチタティーヴォとアリアの前とで聴こえ方が違う。確かにアリアの方が歌唱スタイルを保っていて美しい響きがあるのだが、声そのものが小さい。その時彼は舞台の中央前にいる。一方アリア後半で彼は若干奥に下がるのだが、音としては大きく聞こえてくる。これは、この劇場の構造において音響効果の良好な部分とそうでない所があるということだろう。
劇場やホールはどんなに評判が良くても、各々にクセも得て不得手があるのだと思う。歌手や演出家は使用するにあたって早々に(リハーサルの間に)それらを見抜いてより良いパフォーマンスを見せてほしいと思う。